設備とコストをスリムアップする
仮想化基盤構築プロジェクト、始まる。
NTTネオメイトのITビジネスサービスのなかで、重点サービス商材として成長してきたAQStageIPコールセンターサービス。2年連続で国内シェアNo.1(富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2015年・2016年版CTI SaaS市場調査」より)に輝き、毎年1,000席規模のお客さまの増加が見込まれている。しかし、サービスが始まってから10年が経ち、IPコールセンターのインフラであるサーバー数は200台を超える規模にまで膨れ上がり、その運用・管理コストも莫大なものになっていた。さらには、ストレージや通信機器などのプラットフォームも老朽化し、収容限界への対策もとらなければいけない。そこで、これまで個別に構築・保守管理を行ってきた主要サーバー装置を中心としたプラットフォームを、仮想基盤上に統合・集約して一新し、設備のスリム化をはかることに。10分の1の効率化をめざして、世界最先端のソリューションに取り組むために、30人規模のメンバーを集めた一大プロジェクトが始動した。
お客さまからの各種問い合わせや注文の受け付け、あるいは企業からお客さまへのアプローチのために、電話対応を行うコールセンター。NTTネオメイトは、コールセンター業務に必要な機能をまとめた「AQStage IPコールセンターサービス」をクラウドサービスとして提供し、高い評価を受けてきた。今回のプロジェクトは、サービス開始から10年が過ぎた同サービスの既存のプラットフォームを、仮想化基盤に統合・集約すること。設備を約10分の1にスリムアップすると同時に、運用・管理コストの大幅削減もめざすというものだ。
仮想化にあたっては、2つの大きな基盤構築が同時に進められた。ひとつは、コールセンターなどに導入されるIP-PBX製品で世界トップシェアを誇るAvaya社製アプリケーションを仮想化基盤「C−Pod(Collaboration-Pod)」への統合。もうひとつは、付随する通話録音サービスやCRM(顧客関係管理、Customer Relationship Management)サービスなどを、NTTネオメイト独自で構築する仮想化基盤に統合するというものだ。
Avaya社製アプリケーションの仮想化において、プロジェクトリーダーを務めた橋本は、本プロジェクトの検討段階から参加していたという。
橋本のチームに配属された中川は、コールセンター業界ではまだ事例の少ない、VMWare(VMWare社のコンピューター仮想化ソフトウェア)の導入とC−Podの構築、さらには既存アプリケーション、既存提供サービスの移行を担当。今岡は、Avaya社製品以外のアプリケーションを構築するチームリーダーを、ネットワーク分野で経験豊富な藤田は、ネットワーク仮想化のチームリーダーを担当した。
2016年3月にメンバー全員を集めたキックオフの後、4月からはさっそく機器の調達、設計や検証試験が始まった。
しかし、何と言っても前例の少ないプロジェクトであり、当初メンバーたちは知識と技術の習得に追われることになった。とりわけ、入社2年目にして難易度の高いプロジェクトメンバーに選ばれた中川は、習得すべき知識と技術の量に圧倒されたという。
一方、コールセンターの担当になってから1年経たずして、アプリケーション構築のリーダーに抜擢された今岡も、既存環境の確認や資料の読み込みに時間を割き、検証環境で動きを確認しながら慎重に作業を進めたという。ところが、プロジェクト後半にさしかかる頃、今岡のチームである提案が持ち上がった。
アプリケーションチームは数週間に渡ってハードな日々を送ることになったが、この変更はIPコールセンターサービスの質を向上させ、競争力にもなるという大きな価値を生み出すことになった。
長年、ネットワーク技術者として社内プロジェクトのネットワーク部分を担当してきた藤田は、今回は初めて扱うAvaya社製の機器に戸惑ったという。これまでは、主にシスコシステムズ社の機器に関する技術支援を行ってきた藤田にとって「未知の動作」が不安要素になったのだ。
橋本と中川は、東京にある日本アバイア社で3日間に渡って英語での研修も受けた。日本アバイア社にとっても新しいチャレンジ。NTTネオメイトとの合同での研修を開き、講師にはアメリカから製品開発者が招かれていた。
春から半年あまりをかけて進められたプロジェクトの佳境は、夏頃だった。完成した2つの仮想化基盤を組み合わせて検証する結合試験、システムに負荷がかかった状態でも正常に動作するかを試す負荷試験などを実施。9月には最初の移行作業に無事成功した。
今岡は、今回の成果のひとつに「部署や担当を越えたメンバーと連携できたこと」を挙げる。
「NTTネオメイトは、ネットワークの保守・運用をしている」という“まもり”のイメージが強いが、その一方で新しいチャレンジを歓迎する風土がある。藤田と橋本は入社当時のことを振り返って言う。
計画通りに完了した、IPコールセンターの仮想化プロジェクト。2〜3年のうちには、すべてのサーバーを集約させ、10,000席規模IPコールセンターサービスの実現をめざすという。
当面は、サービス基盤を安定的に運用させることを軸としながら、既存お客さまの移行作業、新規お客さまへの迅速な対応や、新しいサービス開発に取り組んでいくことになる。今回集められた30人のプロジェクトメンバーはいったん解散となるが、大仕事を成し遂げた達成感が生み出したつながりはこれからも変わることなく続いていく。そして、妥協せずに高品質なサービス提供をめざしたというプライドは、今後もお客さまを第一に考えたサービスを生み出す力になるに違いない。