クラウド基盤を活用した社会課題の解決
新型コロナウイルスワクチンの接種を
舞台裏で支えたIoTサービス

PROJECT STORY03
小林 正和
MASAKAZU KOBAYASHI
クラウドビジネス部
2006年入社
情報科学研究科情報
メディア工学専攻
薮田 航一
KOICHI YABUTA
クラウドビジネス部
2021年入社
総合情報学部

NTTスマートコネクトでは、クラウドビジネスの新たな可能性として、IoTサービスに向けた取り組みを加速させています。IoT(Internet of Things)とは、もののインターネットと呼ばれるように、あらゆるものがインターネットに接続されることで、そこから上がってきたビッグデータの収集、分析する取り組みです。そして、データを活用することで、これまでにないサービスの創出に向けた動きが活発になっています。今回、新型コロナウイルスのワクチン接種において、当社が開発を手がけたIoTサービスの一例を紹介いたします。

TALK.01

氷点下での決まった
温度での保管が
必須の
新型コロナウイルスワクチン

2021年1月、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻となる中、全国でワクチン接種体制確保事業が本格的にスタートし、各自治体が一斉に動き出しました。その際、大きな課題となったのが、ワクチンを適切な温度で冷凍保存する必要があった点です。しかも、使用前に決められた時間で決められた温度に解凍する必要がありました。使用するまでは決められた温度を厳密に維持して冷凍保存する必要があったことから、各自治体の担当者はその対応に追われることとなったのです。

医薬品は食品などと同様に、製造段階から出荷に至るまでの全工程で厳密な衛生管理が求められます。この管理手法はHACCP(ハサップ)と呼ばれ、中でも温度の管理が重要管理点とされ、これを連続的に監視、記録することが求められます。しかし、原材料の受け入れから製造、包装、保管、出荷の全過程で温度などのデータをとり、記録していくのは、そもそもたいへん手間のかかる作業である上、急ごしらえの接種会場でのHACCP対応は容易ではありません。

各自治体において、ワクチン接種に向けた動きがあわただしくなる中、接種会場に届けられたワクチンの冷凍保管に向けた準備が急ピッチで進みました。併行して、自治体の担当者からは、「来週にもワクチンが届くのだが、温度管理で困っている」といった相談が当社に相次いで舞い込みました。

TALK.02

営業部門と技術部門が
一体となって
要件に即した
サービスの構築に挑む

「お客様の困りごとを何とか解決したい」。そう考えた当社が提案したのが、「温度センサーによる自動測定をもとに、測定データをクラウド上に送信して履歴を残す」という方法でした。

これならば、人手を介することなく、ワクチンの保管温度が維持されたことを証明でき、ワクチン接種を受けにきた人に安全・安心を保証することができます。また万一、冷凍庫の扉が開放されたままとなって保管温度が上昇すると、担当者のスマートフォンなどにメールでアラートが届く仕組みとなっています。これによって、確実に対応できることから、ワクチンの保管における安全・安心を確保できるわけです。

このプロジェクトを担ったのが、当社にてIoTやDX(デジタルトランスフォーメーション)に関わるクラウドサービスの開発と販売を手がける小林正和と薮田航一を中心としたチームでした。強みは、ビジネスモデルの構築を手がける営業部門と、システムの開発や機材の調達などを手がける技術部門が一体となって、サービスの構築に取り組む点です。

しかも、NTT西日本グループの広範なネットワークを用いて、IoTセンサーのデバイスメーカーをはじめ、機器設置の工事業者、アプリ開発業者などと連携し、品質の高いサービスを短期間で構築できる点にあります。サービス化に向けて必要な設備や機能を、いわばワンストップで用意できるだけの組織力とマネジメントのスキルを持ち合わせており、各自治体が当社に期待を寄せる理由もここにあります。

TALK.03

常に時代の先を見すえつつ、
新たな技術の可能性を
追い続けている点が強み

当社では、問い合わせが来てからすぐさま、ワクチン管理向けの「HACCP対応サービス」を提案することとなったのです。相談からサービスの開始までわずか3営業日というスピーディな対応でした。「第一弾のサービスインに向けては、温度センサーなどの機材は取り急ぎ、社内から集めたほか、データをクラウドに上げるための通信体制などを構築しました」(小林)というほど、スピード重視の対応でした。

当社では、なぜここまで素早い対応が可能だったのか? それは、早くからIoTの可能性に着目し、クラウド技術を基盤としたビジネスの可能性を追求してきたことが大きな理由です。これについて、小林は次のように述べています。

「当社ではDXの一環として、IoT分野の開発を進めてきました。そのアプリケーションの一つとして、NTT西日本などと連携して、温度センサーを用いた『熱中症対策サービス』や『HACCP対応サービス』といったメニューをすでに準備して、企業や自治体などに提案を行っていたのです。そして今回、ワクチンの冷凍保管の件が生じた際、すでに構築済みのシステムを流用したわけです」

TALK.04

コロナ禍にあっても
テレワークを駆使して
業務を滞りなく推進して
サービスを構築

もっとも、スピーディな対応を実現したといっても、サービスインの舞台裏は「正直なところたいへんだった」と、薮田は振り返ります。「どのような段取りでサービスを提供するかといった業務フローの整理から始まって、お客様のリストづくり、さらには収支計画の立案と、サービス提供に向けてやるべきことは山積みでした。それでもチーム内で役割を分担して、フットワークよく対応できたと思っています」

コロナ禍にあって、対面での打ち合わせが大きく制限させた中、営業における苦労が少なくなかったものの、薮田が語るとおり、社内での動きはスムーズでした。加えて、「オンライン・ミーティングを機能的に行うことで、午前中に九州地方の自治体、午後から山陰地方との打ち合わせというように、コロナ禍前では考えられなかった、効率的な営業が取り組めることができました」と、小林は語っています。

それというのも従来、社内において働き方改革を進めていたことから、オンライン・ミーティングに対する抵抗が少なく、「コロナ禍で出社ができなくなった際、社員のだれもがテレワークに自然に対応できた」(薮田)ことが大きいといえます。ITの活用と併せて、時代の先を見すえた新たな働き方を進めている点は、当社の強みの一つとなっているのです。

TALK.05

あくまでもお客様の
目線で考え動き、
めざすサービスを
組み立てていく

「HACCP対応サービス」の第一弾は、各自治体でワクチン接種が本格化した2020年8月にサービスイン。基本的な機能として、温度センサーでワクチンの保管温度を自動測定し、そのデータをクラウド上で保持することで、データの見える化をはじめ、万一の際のアラートの通知、そして帳票への出力といったHACCP対応に準拠した温度管理を実現しました。さらに、12月からは標準化したサービスの提供を開始したのです。

加えて、自治体によっては、「メールだけの通知にとどまらず、だれもがすぐにわかるように警告灯で知らせるようにしてほしい」といった要望に応えて、ただちにカスタマイズした機能を検討するなどサービスのきめ細かさが高く評価されました。

「当社のサービスづくりの特長は、あくまでお客様の目線に立つことにあります。しかも、社員一人ひとりがよいよりサービスに向けてアイデアを出し合い、しかも形にしていくために汗をかきます。現場の声を大切にして、お客様の役に立つサービスを構築していくから、評価され、そしてそれが仕事のやりがいにつながっています」(薮田)

TALK.06

社会課題の解決という
観点から
来るべき時代に向けて
IoTの可能性を拓いていく

2021年12月初旬、日本国内において、新型コロナウイルスワクチンを少なくとも1回接種した人が1億人を超えました。夏前には接種率はわずか数%にとどまっていたのに対して、半年足らずで人口の約8割への接種を実現したのです。この成果について、各地における医療従事者や自治体による懸命の取り組みのおかげであるのはもちろんですが、その陰ではワクチンの低温管理を実現するため、当社の「HACCP対応サービス」が貢献したといえます。

「約1年間にわたる限られた取り組みの中で、チームのメンバーが一丸となって、ワクチンの保管における安全・安心を守る仕組みづくりに注力してきました。あわただしい状況の中で自治体の方々のお役に立てたことはうれしく思います。一方で、お客様さまざまな声をうかがう中で、コスト面など課題が出てきたのも事実です。こうした経験を今後のシステム開発に反映していくことで、当社でしかできないIoTサービスを追求していきたいと思います」(薮田)

「ワクチン向けのサービスは、IoTの可能性を示す一つのきっかけとなりました。当社としては、クラウドという基盤の上でいかに新たなサービスを構築していくかが、大きなテーマです。IoTサービスはまだまだこれからの分野。しかし、世界中で競争が激化しています。当社としては、今回の挑戦を活かしつつ、技術やノウハウの引き出しを一つでも多く持つことで、社会の課題を解決できるサービスの提供に努めていきます」

当社の「HACCP対応サービス」は、コロナ禍の最中、まさに社会課題の解決に役立つサービスとして立ち上がり、ワクチン接種率の向上に向けた取り組みの一端を担っています。今後は今回の経験を踏まえて、IoTサービスの本格的な事業化に向けて、当社は大きく前進していきます。また、IoTの分野にとどまらず、クラウド基盤を活かした新たなビジネスの創出に向けて、NTTスマートコネクトは挑戦を続けていくのです。

Hello, Let’s create
a new World together!