PROJECT STORY 02

森林・林業DXプロジェクト

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  • #DX
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DXによる効率的な
森林管理で地域林業と
環境保全に貢献。

PROJECT OUTLINE

日本の森林が抱える数々の課題を
解決に導く「森林・林業DX」

日本は国土面積の3分の2を森林が占め、その約4割が戦後、国土復興のために造られた人工林。うち半分が造林から45〜50年の伐採適齢期を迎えている。森林は国土保全や水源かん養、気候変動につながるCO2吸収など多面的な機能を有しており、適切な管理が欠かせないものだ。だが、安価で安定供給される輸入木材に押されて国内林業の競争力が低下し、林業従事者が減少して伐採や再造林が進まないなど負のスパイラルに陥っているのが現状である。また放置林は災害に弱く、さらにCO2吸収源としても認められないため、地域の防災面や脱炭素社会の妨げになる。政府が掲げる「2030年の温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減」という目標も、森林管理を進展させないことには達成が難しい。この重大な全国的課題解決に向けて立ち上がったのがNTT西日本だ。グループ企業の「地域創生Coデザイン研究所」を中心に、膨大な森林情報のデジタル化を通じて効率的で管理がしやすい環境を創造し、国内林業の活性化につなげようという「森林・林業DX」構想を打ち出し、実現へ走り出した。

森林情報のデジタル化で、高度な
林業サプライチェーンの確立へ

「森林・林業DX」構想の具体的内容は、まずドローンを用いて森林を空撮し、レーザー計測とAIデータ解析によって、これまで目視で調査されていた木の種類や本数、高さ、面積などの情報を算出してデジタル化する。それを地域が持つ森林情報(地番、所有者、境界線など)にかけ合わせ、一元的に管理する「森林クラウド」を構築。集まった情報をあらゆる森林・林業関係者へつないで木材需給のマッチングを図り、地域林業を活性化させて健全な森林ライフサイクルを創り上げる、というものである。2021年、その実証プロジェクトがスギ生産量30年連続日本一を誇る林業先進県・宮崎で始動。地元自治体や森林組合、大学などさまざまなパートナーとの連携で行われた森林情報デジタル化の共同実験では、従来4名の人員で10日間かかっていた広大な森林調査をわずか4時間で計測・データ化できるといった高い成果を上げた。現在も続く同県での社会実装は森林管理や林業改革の先進事例として全国の注目を集め、他地域からの問い合わせが着々と増えつつある。ICTでより快適便利な社会の創造をめざすNTT西日本の活動は、日本の一次産業活性化と自然環境に配慮された循環型社会をも生み出そうとしている。

INTERVIEW

R. SUZUKI

地域創生Coデザイン研究所
2016年入社
工学部卒

森林・林業DXの先行事例に学びながら
全国展開できる事業に発展させる仕事

NTT西日本は現在、西日本30府県の支店長をプロジェクトオーナーとし、地域の本質的な課題を自分ゴトとして深掘りして考え、地域のパートナー(自治体・企業・団体・住民の皆さまほか)とともに持続可能な解決策を創出する「地域のビタミン活動」を進めています。私が所属する地域創生Coデザイン研究所は、地域のこの活動をより広範かつトータルでコンサルティングする組織。各支店のメンバーやパートナーと協力し合い、各地域の課題探索から解決策のシナリオ構想、実現への企画、試行、社会実装まで幅広い業務を進めています。宮崎をフィールドとした森林・林業DXは地域のビタミン活動の一環として、2019年にスタートしたプロジェクトで、私は2021年から参画中。現在は森林・林業DXの全国展開を視野に入れた事業化推進とプロモーション活動に携わっています。主な仕事内容は、森林や林業に関連する人たちにとって最適なサービスを検討することと、サービスの必要度やコスト、継続性を考慮する事業性の評価。森林管理やカーボンニュートラルの取り組みに関心を持たれる地方自治体や林業従事者、メディアへの説明会対応、地域の取り組みや課題を中央省庁などに説明することも私の担当業務になります。日々、宮崎支店のメンバーや現地自治体、森林組合、林業従事者などと密にディスカッションしながら、森林・林業DXの普及に向けたフレームワークづくりに力を注いでいます。

林業の未来と循環型社会の実現へ
確かに貢献できるやりがいがある

森林・林業DXでは、「森林情報のデジタル化(見える化)→ 山林所有者の特定や資産価値・CO2吸収量の把握→ ICTを活用した木材需給のマッチング→ 地域林業の活性化→ 適切な森林管理による環境保全」というサイクルの確立を目的にしています。この流れを事業化していく上では、各フローにおける課題解決を図るだけではなく、全体をいかに循環させるかが重要だと私は考えています。そのために、例えば森林情報の確認や木材のインターネット取引ができるポータルサイト(すでに実証済)の利用者増に工夫を凝らしたり、CO2排出企業や投資家に本プロジェクトへの賛同や資金協力を呼びかけたりすることも必要になってくるはず。考えること、やるべきことはたくさんあり、今の私には難しさを感じる部分も多くあります。しかし、自分たちが主体となって、仲間とともに林業を起点とする循環型社会の青写真を思い描き、形にしていくやりがいはこの上ないものがあります。そうした大きな仕事ができるのは、マクロな視野で真剣に地域活性化に取り組むNTT西日本に自分がいるからこそ。森林・林業DXの全国への架け橋になる使命をしっかりと果たして、持続可能な社会の創造に貢献していきたいと考えています。