ついに本格始動したNTT西日本のクラウド戦略(※注1)。
「Bizひかりクラウド」ブランドのもとに具現化された3つのサービスの裏には、
クラウドにかけるプロジェクトメンバー一人ひとりの熱い想いが託されていた。
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2011年3月9日、NTT西日本は、NTTスマートコネクト社(※注2)をはじめとしたグループ各社と連携し、「Bizひかりクラウド」のサービス提供を開始。クラウドビジネスに本格参入した。「Bizひかりクラウド」とは、NTT西日本が提供するクラウドサービスを体系化したもので、大きく「コミュニティー向けメニュー」と「自治体・企業向けメニュー」の2つで構成されている。主な特長としては、業界や地域の特性に応じたメニューがあらかじめパッケージ化されているため導入・利用しやすい点、また光ネットワークやデータセンター(※注3)を基盤としたメニューや、クラウド環境を診断するメニュー(※注4)など、通信キャリアならではのインフラとノウハウを活かしたサービスを提供している点が挙げられる。頭に「Biz」と冠する通り、まずはビジネスユースでスタートするものの、今後はSOHO向けサービスの提供を経て、将来的には個人向けのクラウドサービスを提供していく構想だ。
NTT西日本ではすでに、一部のお客さまに対してクラウドサービスを提供しているが、「Bizひかりクラウド」という体系だったメニューとして整備したことにより、いわば「クラウドビジネス」の看板を表に掲げ、本格的に取り組んでいく姿勢を示したことになる。社内の体制的にも、2011年4月に法人営業本部内に「クラウドビジネス部」という新たな組織を立ち上げ、そこに技術や営業、サービス開発、運用など各分野のプロを集結させた。
「NTT西日本では、社内各部署でそれぞれの高度なノウハウを蓄積しており、かつ各分野における知識・経験豊かなスペシャリストが多数在籍しています。今回、クラウドビジネスに本格参入するにあたり、社内に散らばっているこれら各分野のノウハウと人材というリソースを集め、同じベクトルに向けることにより、それらのシナジー効果の最大化を図ろうというのが、クラウドビジネス部発足の大きなねらいです」(赤堀)
そうしたねらいのもとで新設された「クラウドビジネス部」は、それぞれミッションの異なる4つのグループで構成されている。赤堀の所属するビジネス開発・戦略グループは、中長期的なクラウドビジネス戦略のもと、新規サービスを実際につくっていくグループだ。一方、鬼武の所属する営業推進グループは、法人、自治体、医療という3分野において、クラウドサービスの営業活動やニーズ把握を主に手がけている。そして、竹中の所属するサービスオペレーショングループは、クラウドサービス提供に係るシステムの構築、運用、保守を担当するとともに、BCP対応サービス(※注5)の主管部を務めている。それらに人材開発グループを加えた4グループで連携しながら、クラウドビジネスを力強く推進している。つまりは、NTT西日本にある「4つの仕事」を一部署内に包括した組織体制と言えよう。「サービス」をつくる仕事としての、ビジネス開発・戦略グループ。「お客さまとの関係」をつくる仕事としての、営業推進グループ。「ネットワークインフラ」をつくる仕事としてのサービスオペレーショングループ。そして、「会社」を支える仕事としての、人材開発グループ。NTT西日本という会社全体で展開している連携を、クラウドビジネス部内で濃密に推進することにより、クラウドビジネスというビジネスチャンスを大きく拓いていこうという戦略である。
※注3)防災性に優れたビル環境に加え、生体認証や共連れ防止措置などを備えた入室・退室の管理による強固なセキュリティー環境を提供するデータセンター。西日本30府県、39拠点を展開。
※注4)クラウド移行前・移行後でのトラフィック量、ネットワーク遅延、レスポンス性能、などを調査し、診断レポートを提供することにより、クラウドサービスを安心してご利用いただけるようサポートするサービス。
※注5)BCPとは、災害などの発生時でも、最低限の事業活動を継続、もしくは目標復旧時間内に再開するために、事前に策定する行動計画のことで、東日本大震災以降、急速に関心が高まっている。BCP対応サービスは、そのニーズに対応し、NTT西日本が2011年5月に開始したサービス。データセンターを接続し、複数のデータセンター間のシステム冗長化やデータのバックアップなどを実現する。

クラウドビジネス部では、「Bizひかりクラウド」ブランドのもと、多彩なクラウドサービスを順次拡充させるべく、サービス開発を進めている。とはいえ、クラウドは抽象的な概念であるがゆえにその裾野も広く、多岐にわたる分野すべてにサービス展開するのは難しい。スタートしてまだ間のない「Bizひかりクラウド」としては、まずは選択と集中が求められる。その一つとして赤堀らビジネス開発・戦略グループが着目したのが、スマートフォンやタブレット端末等のモバイル端末に対応したグループウェアだった。
「今はまだ、一般の方にクラウドと言ってもなかなか身近に感じてもらえません。しかしこれからは、仕事や生活に不可欠な存在にしていきたいと私たちは考えています。そのためには、まずクラウドを浸透させることが第一。そこで、誰もが使える身近なツールとして、スケジュールの共有などが容易にできるグループウェア(※注6)に目をつけました。それをクラウドで、しかもパソコンだけでなくスマートフォンやタブレット端末といったモバイル機器でも利用できるようにすれば、クラウドを身近に感じていただけるのではないかと考えたのです」(赤堀)
クラウド利用にあたっての心理的ハードルの一つに、「インターネット上に情報を保存するのは危ない」という先入観がある。しかし、パソコンの盗難や紛失によってデータが外部に流出してしまうリスクを考えれば、今や個人の端末よりもインターネット上に情報を置く方が、はるかに安心と言える。サービス提供者側がリスク対策をして安全性を担保してくれるおかげで、利用者側は気軽に情報を預けて利用できる。そうしたクラウドのメリットを、モバイル対応のグループウェアをトリガーに実感していただこうと考えたのだ。
サービス開始は2011年10月。「モバイルスマートウェア」というサービス名でリリースされる予定だ。
「お客さまにクラウドを体感していただき、広げていくための戦略的なサービスがいよいよ始まります。まずは、クラウドを身近に感じてもらえる環境をつくること、そして大切なお客さまのデータを預ける相手としてNTT西日本を選んでいただくことが重要なので、そのトリガーになればと思っています」(赤堀)
と抱負を語る赤堀だが、実はサービスインに至るまでにはさまざまな産みの苦しみがあった。その一つが、法人営業部内での意識改革。従来、法人営業部では大企業を中心に営業担当が各企業を訪問して個別に提案活動を展開してきた。しかし、今回の商品には、そのような営業方法は合わない。これまでとはターゲットも販売戦略も異なる新しいビジネスモデルで臨む必要があるため、法人営業部における意識改革が求められたのだ。赤堀らは社内理解を得るため、前述したようなクラウド浸透にかける想いと戦略を資料にまとめ、法人営業部や他部署とひたすら打ち合わせを重ねて説得にあたった。

さらにもう一つ、このサービスを実現まで持って行くための提供コストの削減も大きな課題だった。いくらクラウドを浸透させるという狙いがあるとはいえ、経営に影を落とすような収益構造のビジネスではGOサインは出ない。運用システムのコストを何とか下げる方法はないか。赤堀は、竹中らサービスオペレーショングループに相談を持ちかけた。
「まず考えたのは、次に予定している別のサービスとサーバーを共有するという方法です。これなら、サービス単体として見たときのサーバーに関するコストは半減します。加えて、運用保守の将来的な内製化も提案しました。これはどういうことかと言うと、『モバイルスマートウェア』のサービス提供者(※注7)であるNTTスマートコネクト社が社外に委託するサービスの運用保守業務を減らし、将来的には内製化を図るという構想。そうすれば、外部委託費を抑えられ、運用保守コストを低減することが可能です」(竹中)
こうしたクラウドビジネス部内やグループ会社との協働を経て、「モバイルスマートウェア」は晴れてサービスインの運びとなった。
「グループウェアはすでに世の中に数多くあります。しかし、モバイルで利用でき、かつビジネスユースでのクラウド提供となると、まだあまり聞かない。それをNTT西日本が『Bizひかりクラウド』メニューの一つとして出すことに、市場がどう反応するか。そして、クラウド浸透をねらった戦略に、社会がどう反応するか。今から楽しみです」(赤堀)
NTT西日本の提供するクラウドサービスがいかなるものか、いよいよお披露目の時が来た。
※注7)グループ内連携により、同サービスについては、企画をNTT西日本が、サービス開発・販売・運用保守をNTTスマートコネクト社が担当している。










